
以前HHKBについての比較記事を書いていたが、REALFORCEに関して比較した記事は書いていなかった。なので、今回は僕がキーボード沼に引き摺り込まれた原因となったREALFORCEのおすすめモデルを、Macユーザーの視点から考えてみることにした。
補足:HHKBの比較記事はこちら
「徹底比較!HHKBのお勧めモデルを考えてみた[2021年版]」
R2からR3への移行期
この記事を執筆した2022年7月現在、REALFORCEは2代目であるR2、3代目であるR3がモデルによって混在しているという凄まじくカオスな販売状況となっている。そのため、「3代目の方が新しい」、「2代目が安い」という簡単な情報だけ見て選んでいると自分に合ったモデルにはいつまで経っても出会えない可能性が高い。そのため、5分程度の時間があるなら、この記事の先の内容にも目を通していただけるとありがたい。
REALFORCEの世代とモデルについて簡単に解説
REALFORCEは3世代にわたって様々なモデルが発売されているため、まずはそれぞれの世代と代表的なモデルを説明していく。
初代REALFORCE(生産終了)
元々業務想定で作られていたこともあり、REALFORCE史上一番と言っていいほどの無骨さを持つ初代REALFORCE。16年もの間販売されたが、第2世代のモデルであるR2発売後に生産が終了しており、新品を手に入れるのは非常に難しくなっている。
僕が所持している初代REALFORCE 108UBKのケーブル交換修理を行った2021年2月時点ではケーブルは何の問題もなく新品に交換となったため、初代モデルの部品も東プレに残っているのだろうと推測できる。そのため、故障した初代モデルを格安購入したのち修理して使う、という選択にも大きな問題はないはず。とは言っても、後述するR2モデルの改良点がどうしても許容できない一部の人たちが初代モデル争奪戦を常に繰り広げているため中古品も価格は上がるばかり。何か特別な理由がない限りバリエーションが他モデルより少なく、かつ高額な初代モデルを購入する必要はないだろう。
さらに、初代REALFORCEはApple製品での使用を全く想定していない。そのため、初代REALFORCEをMacで使用する際にはソフトでキー配列を変更して使用する必要がある。それが必要ないR2 for Mac、R3と比べると面倒なため、購入するべき理由はほぼないと言って問題はない。そのため後述のHiProも含め今回はあまり言及しない。
初代REALFORCE HiPro(生産終了)
後述するREALFORCE RGBと並ぶ超個性派モデル。HiProという名前ではあるものの、このREALFORCE HiProは上位モデルというわけではなく「タイプライター風のキーボード」という位置付けであるため、超高速打鍵に特化したモデルではないことは理解しておく必要がある。
しかし癖が強かったのが原因だろうか、HiProはR2、R3共に販売されていない。しかも初代REALFORCEと同様Apple製品と相性が悪い製品であることに変わりない上に、タイプライター風キーボードは他メーカーでも販売されており、無理にこの製品を買う必要はない。そもそも、10万円近い価格のHiProを買おうと決めている人はこんな画像未掲載の雑な記事を読むことすらないと思う。。。
REALFORCE R2(生産終了)
第2世代のREALFORCE。初代REALFORCEにあった業務用らしさのある無骨な印象から大きく印象が変わり、一般ユーザー向けにスリムなデザインを採用したことが大きな特徴。他にも、ラインナップ増加、APC機能(後述)の採用、内部鉄板への防錆加工、5000万回のスイッチ寿命を誇る第2世代スイッチの採用、一部配列をゲーミングキーボード寄りのものに変更するなど全体的に近年の一般ユーザーがメインターゲットになっていることを印象付ける特徴が多く、個人的にはREALFORCEが誰にでも勧めやすい製品に進化したタイミングだったと思う。
さらに、後述するREALFORCE RGB、REALFORCE for Macなど、用途想定が偏った製品が多く登場しており、初代REALFORCE以上にさまざまな用途が想定されていることがわかる。
REALFORCE R2 for Windows(生産終了)
Windowsユーザー向けに発売されたREALFORCE R2。特徴は前述の通りだが、後継モデルであるREALFORCE R3の登場によってほぼ全てのモデルが既に生産終了している。さらに、REALFORCE R2には前述の通りMac用のモデルが存在しているため、Windows用モデルを購入する必要は全くないのでMac用キーボードだけ探している人は初代同様こちらも無視してOK。
余談だが、初代モデルと比べてJIS配列のスペースキーが長いことが波紋を呼んだ。それが原因か、後継モデルのR3では初代とR2の間くらいの長さになっている。
REALFORCE RGB
元々ゲーミング用途も想定されたR2だが、こちらは完全にゲーミング用途を想定。押下圧45gのAPC搭載モデルのみという攻めたラインナップに加え、REALFORCE専用ソフトウェアにいち早く対応し、REALFORCE史上初のLEDバックライト、またもREALFORCE史上初のメカニカルキーボードと互換性があるキースイッチに2色整形キーキャップなど、史上初だらけの超個性派。
ベースは上のWindows用モデルなので、ゲーム用途を考えていない人はこちらも無視してOK。
追記:R3版RGBの発売について
2022年9月、東プレが新型ゲーミングキーボードを2023年中に発売することを公式サイトのニュースで発表した。
おそらくR3へのモデルチェンジが行われるものと思われるが、前回のMac版の発売は2022年中と発表された後2022年6月に発売された。それを考慮すると、2023年9月あたりまで待てる人は今R2 RGBを購入せず、新型キーボードを待った方がいいと思う。
重要:REALFORCE R2 for Mac(生産終了)
Macユーザー向けに発売されたREALFORCE R2。Windows向けのモデルと大きな特徴は一致しているものの、デザインや配列がMac向けのものに変更されており、日本語配列の全てのモデルでかな刻印が存在しないことがポイント。実はこのREALFORCE for Mac、BootCamp環境で使用しやすくするための「Windowsモード」なるものが使えたりもするR3に隠れた超優秀モデル。
Windows用と比べてラインナップが少ないのが短所ではあるが、ベースモデルと最上位モデルだけのラインナップでシンプルになっているため、ある意味初心者でも選びやすい。
有線接続のみ対応というのは多少のデメリットだが、据え置きのみでの使用であれば不満は全く無いはず。しかも比較的安く購入できるので、HHKB等省スペースキーボードへの買い足しとしてもおすすめできる。
※追記
2022年10月3日、REALFORCE R2 for Macの生産終了が発表された。R3 for Macへの世代交代が明確に行われたことになる。現在購入可能なR2はRGBとPFU Limited Edition。ただしRGBは新世代モデルの発売が公式発表されていること、PFU Limited EditionはPFUストアでは購入可能なもののREALFORCE公式サイトでは生産終了と表示されていることを踏まえるとMaster Seriesのほぼ全てのモデルはR3への世代交代を完了したこととなった。RGBとアクセサリーの発表にも期待。
超重要:REALFORCE R2 PFU Limited Edition
キーボード界で知らない人はいないと言えるほどの超有名2大巨頭である東プレとPFUのコラボモデルとも言えるようなREALFORCE。PFU Limited Editionという名前にもある通り、REALFORCE同じ東プレ製の静電容量無節点方式を搭載したHHKBの最上位モデル「Type-S」のスイッチを搭載したREALFORCE。
Windows、Macどちらのモデルも発売されており、東プレ版R2にはない「最上位モデル、押下圧45g(東プレ版R2は30gのみラインナップ)」の穴埋めとも言える当モデルだが、重要なのはType-Sのスイッチではなく、R2テンキーレス用とは言ってもREALFORCE用のBIRD電子製アクセサリーが発売されたことだ。
それによって、HHKBの圧倒的長所として君臨しているBIRD電子製アクセサリーの中のパームレスト、キーボードルーフ、吸振マットの3つがREALFORCEでも使用可能になった。特に、パームレストは約4mmというストロークによってキーボード本体の高さが高くなりがちな東プレ製静電容量無節点方式のキーボードには間違いなくと言っていいほど必須であり、初心者リアルフォーサー(REALFORCEユーザーのこと)には大量の他社製品の中からREALFORCEに合うパームレストを必死に探すという恐ろしい通過儀礼が存在したが、純正パームレストとも言えるBIRD電子製が発売されたことによってこの問題に終止符が打たれたのは非常に大きな出来事だった。
とは言ってもフルキーは本体のみ限定発売で本体、アクセサリー共に通常販売はテンキーレスのみであることには要注意。
余談だが、REALFORCEユーザーの僕もこの通過儀礼は経験済み。低反発の分離型パームレストで大失敗し、結局はHHKB用パームレストをHHKBと共用するという選択に至ったが、さらにいい答えがありそうな気がしなくもないと思い続けている・・・
重要:REALFORCE R3
R2からさらに一般ユーザー向けに改良された最新モデルの3代目のREALFORCE、REALFORCE R3。
R2に採用されたスリムなデザインから初代寄りのデザインに逆戻りしたことに加えJIS配列のスペースキー問題をはじめとするR2にあった問題点への対策が行われ、R2のゲーミングキーボード並みの高機能を継承しただけではなく、HHKBですでに採用されていたHYBRID接続(後述)搭載モデルの登場やパネルデザイン、カラーキーキャップなどのカスタマイズバリエーションの追加などが行われた最強モデル。
発売当初はWindows用JIS配列のみだったが次第にラインナップが増え、遅れてUS配列やfor Macも登場。Bluetooth×4+USB×1の接続が可能なHYBRID接続や2つのキー配列保存機能などがあり、より柔軟・多様とでの使用が可能となった。
R2と比べてラインナップが減ったことに対して不満が聞かれるが、2つのキーマップの登録が可能になったことによって「Windows用配列の2つ目のキーマップにMacの配列を登録すること」や「Mac用配列の2つ目のキーマップにWindowsの配列を登録すること」も可能であり、それを利用して好みのスペックのモデルを選ぶという裏技もある上に、これからも新たなスペックのモデルも増える可能性が高いので、実際はそれほど大きいデメリットとして考える必要はそれほどないと個人的には思う。
REALFORCE R3S
R2の筐体を流用してR3の機能に対応したことによって、R2の省スペースを維持したままR3用のソフトウェアに対応、キーマップ入替機能やAPC機能がR3と同等に強化され、大きすぎると言われたJIS配列のスペースキーの幅も短縮された実質R2 Evoとも言えるモデル。
デスク利用のみであればこのR3Sに勝るモデルは現在存在しないと言って問題はないはずだが、残念ながらfor Macは存在しない。なのでどうしてもR2が欲しいという人にはfor Mac PFU Limited Editionを割引時に買う方が圧倒的におすすめ。同等の価格で済むし、しかも見た目も美しいREALFORCEが手に入る。
比較ポイント
REALFORCEを購入検討するに当たって、今まで説明してきた世代の話を全て覚える必要はない。そもそも、僕がREALFORCE 108UBKを購入した際にはモデルを決めてさえいなかったし、世代や型番の区別さえも知らなかった。しかし今僕は満足している。理由は簡単だ。全モデルが静電容量無節点方式を採用しており打鍵感は素晴らしく、大体はどのモデルを選んでもそれなりに満足できてしまうからだ。
ここからは、自分に合うREALFORCEを選ぶための大事な比較ポイントを一つずつ見ていこう。
Pro?Lite?
以前HHKBには安価なLiteモデルが存在していたことがあったが、そもそもREALFORCEに安価モデルが発売されたことがない。そのため、どのモデルを買ってもそれなりに満足できるのだが、ほぼ全ての新品が2万円超え、最上級グレードになってくると3万円を超える。中古も「これって新品価格じゃないの!?」と思ってしまうほどの超高額。
個人的には、安価なメンブレン方式を使用したLiteモデルが発売して欲しいとは思うものの、静電容量無節点方式の羽毛布団のような打鍵感が売りのREALFORCEには安価モデルは発売されないと思われるので、どうしても不安な人はREALFORCEに近いような「軽い押下圧、メカニカル風」の格安メンブレンキーボードを試してみることをおすすめする。ちなみに、僕のおすすめは「ELECOM TK-FDM088TBK」。REALFORCE Liteが登場した際にはこのような製品になるはずだと勝手に想像している。
JIS配列?US配列?
Mac or Windows問題と同じほどかそれ以上に話題に上がるキーボードのJIS配列 or US配列問題。
それに関しては「Apple信者1億人創出計画」のこちらの記事がものすごく参考になる。
※MacBook Proとなっているが、基本的にはJIS・USどちらのキーボード配列がいいかというお題になっているため、一度は読むべき。
「MacBook Pro日本語or英語配列キーボード問題。答えはただ1つ。」
HHKBの比較ではHHKBの性質上圧倒的にUS配列を勧めたが、REALFORCEでは少し答えが違う。理由は重さだ。省スペースで比較的軽量なキーボードであるであるHHKBとは違い、REALFORCEはごく一般的な配列を採用しており、かつ内部に鉄板があることによってHHKBの約2〜3倍の重さがある。それは据え置き使用での筐体の高い安定性による快適な長時間打鍵の快適性が保証されるとともに、毎日の持ち運びはほぼ不可能であることを示している。そのため、ほぼ間違いなくデスク以外用に別のキーボードを購入する必要がある。
そのため、個人的にはUS配列を勧めるものの、基本的には元々持っていた外付けキーボードやMacBookのキーボードの配列に合わせて買うことをお勧めする。カスタマイズモデルではない全てのMacBookがJIS配列のため、配列のカスタマイズを行なっていない人はJIS配列を購入した方が満足度は高いと思う。
ただし2022年7月時点、REALFORCE R3 for MacのJIS配列ブラックは耐久性に劣るレーザー印刷が採用されている。ホワイトであれば問題ないが、ブラックの中で唯一耐久性の高い昇華印刷を採用するUS配列は刻印の視認性が非常に低いため勧めにくいという非常に謎な状態になっているのでJIS配列でブラックを選ぼうと予定している人は要注意。
ちなみに後述するHYBRIDモデルのJIS配列だが、iPadに接続するとUS配列キーボードとして認識され一部のキーが正しく入力されないので要注意。iPadにも接続して使う予定があるならUS配列の方が満足できる可能性が高い。しかし、REALFORCEの機動力の低さは結果的にiPadの足を引っ張ると言う問題を引き起こしがちなので、iPadでメインに使うなら軽量省スペースなHHKBを選んだ方が幸せになれると思う。
※追記
10月25日にリリースされたiPadOS 16で、ついにiPadでも外付けキーボードの配列が設定できるようになった。そのためJIS配列のキーボードを使用してもUS配列と誤認識されることは無くなった。しかしiPadメインで使うなら機動性で上回るHHKBが優位であることは変わらない。
フルキー?テンキーレス?
これまた論争が止まないフルキー or テンキーレス問題だが、個人的にはテンキーありモデルがお勧め。例えばこのモデル。(REALFORCE Storeで他のモデルも比べてみて欲しい)
「R3HA11/ハイブリッドモデル/フルキーボード/無線&USB/静音/ブラック&ダークグレー/日本語配列/REALFORCE/R3キーボード」¥34,980
「R3HC11/ハイブリッドモデル/テンキーレス/無線&USB/静音/ブラック&ダークグレー/日本語配列/REALFORCE/R3キーボード」¥34,540
上がフルキー、下がテンキーレス。搭載機能は全て同じでテンキーがあるかないかの差だけなのだが、フルキーモデルはテンキーが搭載されているのに価格はほぼ同じなのだ。
ちなみに、テンキーレスモデルにも大きなメリットがある。この3つが魅力的に感じるならテンキーレスの方がお勧め。
・BIRD電子の吸振マット使用による打鍵感向上&静音化(R2のみ該当)
・300g軽量、かつテンキー分省スペース。
・他社テンキーを外付けとして柔軟な配置が可能
※押下圧45g標準スイッチの外付けテンキーが存在するが、生産台数が少なく販売時は毎回争奪戦となる上に価格もとんでもなく高額なので、他社製品の方がおすすめ
押下圧は?
REALFORCEには4種類の押下圧がある。
・力の強い指で押すキーの押下圧を重めに、力の弱い指で押すキーの押下圧を軽めにした、タイピング特化の変荷重
・全キーを同じ押下圧にした等荷重キーボード、その中でも中間クラスの押下圧の45g
・等荷重キーボードの中で一番軽い押下圧の30g
・等荷重キーボードの中で一番重い押下圧の55g(2022年7月時点現在、新品入手不可)
重さを簡単に表すとこんな感じ。変荷重は力の強い指は45gと同じ押下圧となっているため、タイピング特化で改良された45gと捉えて問題ない。
さて、この押下圧なのだが、当然個人差があるため試打しなければわからない。ただ一つ言えるのは、中間クラスの45gや変荷重でも同じ45gのHHKBより疲れないということ。
僕は変荷重のREALFORCE 108UBK、HHKB(静音・非静音それぞれ)を所持しているが、学習・ブログ執筆・ぬふぬふライブが重なった際にほぼ一日中キーボードを打鍵した日もあった。実はその時それぞれのキーボードを使ってみたが、変荷重のREALFORCEはHHKB Type-Sと比べても圧倒的に疲れにくいと感じた。だが、それは変荷重であることが理由ではない。前述した内部鉄板による安定性なのだが、重いだけに剛性感があり高速打鍵をした際の指が吸い付く感触の質の良さがHHKBを大きく上回るため、結果的に指へのダメージが軽減されていたからだった。
※REALFORCE変荷重のEscとNumLockが55gとなっている?のだが、REALFORCEの55gとHHKBの45gの体感押下圧はほぼ同じだった。軽い方から30g<<<<変荷重<45g<<<<HHKB=55gくらいの体感。
個人的なことを言ってしまうと、どの押下圧でも満足できると思う。そもそもREALFORCEが本当に気に入れば正気に戻る頃には多数所持していても全くおかしいことではないので、あなたが1%でも欲しいと思っているのならばこんな記事は今すぐブラウザバックして、公式ストアでたまたま目に止まったモデルを購入してみてもいいのかもしれないとまで思う。
静音?非静音?
これは好みによるのだが、凄まじい筐体サイズと重さによって外出先で使用する確率がHHKBより圧倒的に少ないREALFORCEは、打鍵音が大きいことによる弊害が少ないため静音の有無を重要視する必要は全くないと思う。
一番のおすすめは試打をして気に入った方を選ぶと言うこと。ただ、展示されている店舗が少ないのが大きな問題。試打できない場合でも、Youtubeの打鍵音動画を参考にして自分が気に入りそうな方を選択するという方法もある。
ただし、初代REALFORCEユーザーを対象として一つ注意してほしいことがある。それは、R2以降の静音モデルの打鍵感は初代静音モデルのふわふわ感が消えている可能性が高いということだ。
YouTubeの打鍵音動画を見る限り初代の静音モデルはふわふわ感が非常に強い打鍵音なのに対し、R2以降の静音モデルは非静音モデルの打鍵音をそのまま小さくしたようなカチャカチャ音がしっかり残ったものに聞こえる。僕は2022年6月にREALFORCE R3HH11を購入。はじめてREALFORCEの静音モデルを入手したのだが、実際、R3HH11の静音スイッチも非常にキレがあって、かつソフトで自然なキータッチだ。不満どころか中毒になってしまった。
おそらく、5000万回の打鍵に耐える第2世代スイッチに改良された際に何らかの仕様変更があったのだろう。初代静音モデルの印象があまりよくなかった人も、R2以降の静音モデルは確認しておいた方がいいかもしれない。
APCの有無
R2から登場したAPC(アクチュエーションポイントチェンジャー機能)。これは各キースイッチのオン位置を3段階(R3は4段階)で調整できる機能なのだが、キースペーサーと合わせてストロークの調整を行うことができるという利点があるためストロークが浅いMagic Keyboardやバタフライキーボードからの移行率が高いMacユーザーは、予算が許すのであればAPC機能とキースペーサーを利用してゆっくりとREALFORCEの深めのストロークに慣れていくことをお勧めしたい。
ちなみにR2 for Macは上位モデルのSAのみ、R3は全機種が標準装備している。
USB?HYBRID?
REALFORCE R3でいよいよ登場したHYBRIDモデル。これはR2までのUSB接続に加え、さらにBluetooth 5.0を使用して4台のデバイスとマルチペアリングができるという驚きの機能。しかも有線とBluetoothを両方使用した5台のマルチペアリングにも対応しているという凄まじいスペック。
実はほぼ同じ設計で同じスイッチを使用しているHHKBで2016年にBTモデル、2019年にHYBRIDモデルが登場しており、初のBluetooth搭載モデルであるBTこそ接続不良などもあり不満が多かったものの、バージョンアップされたHYBRIDモデルではその不満もあまり聞かなくなった。しかもHHKBのHYBRIDモデルのBluetoothバージョンが4.2なのに対しR3は5.0なので、接続性に関しては全く心配する必要はないと感じる。
ただし何度も書いている通りREALFORCEは持ち運びに向かない。凄まじい筐体サイズと重さなのでほぼ自宅での使用となるはず。iPadやMacBookとペアリングするにもキーボードがオーバーサイズになることは明らかなので、「どうしても無線が欲しい!買ったら絶っっっ対マルチペアリングしたい!」と思っていないのであればHYBRID機能を重要視する必要は10000%無い。その差額でHHKBを購入した方が結果的に快適度は増すだろう。
ただし、Macユーザーには非常に大きなメリットがある。それは、2021年のWWDCで発表されたユニバーサルコントロールを、Apple製マウスやトラックパッドとHYBRID接続を利用することでトラブルなく安定して使用できるということだ。
最近僕もMagic MouseとREALFORCE R3でユニバーサルコントロールの使用を開始したのだが、即座に接続先を切り替えながらマウスが複数デバイスを経由しながら操作できるのは本当に革命的で、作業効率は大幅に上昇した。その面を考えると、現在対応デバイスが少ないユニバーサルコントールを活用しやすくなるHYBRID機能は、Macユーザーにとって価値が非常に高いものだとも言える。
レーザー印刷?昇華印刷?
打鍵感も変わるし耐久性や満足度にも直接影響するので、超超重要ポイントでもあるキーキャップ問題。
REALFORCEにはレーザー印刷と昇華印刷という2つのキーキャップ印字方式がある。
レーザー印刷・・・キーキャップ表面をレーザーで焼き付けて印字する方式
(R2 for Macではブラックに該当、R3 for Windowsではホワイト、またはブラックの一部に該当、R3 for MacはJIS配列ブラックが該当)
昇華印刷・・・樹脂にインクを高熱で染み込ませて印字する方式
(R2 for Macではシルバーに該当、R3 forWindowsはホワイト、またはブラックの一部に該当、R3 for MacはJIS配列ブラック以外が該当)
耐久性の面でも打鍵感の面でも間違いなく昇華印刷の方がおすすめ。
僕が使用している初代モデルの108UBKはキーキャップの手触りは、ぬるぬるな上に手汗に敏感で長時間のタイピングでは手汗ダメージのせいで指の滑りが非常に悪くなる。ただしR2以降のレーザー印刷では、キーキャップの素材がABSから昇華印刷と同じPBTに変更されており、R2 for Mac、R3共に手汗問題は該当しない。
しかし印刷の方式上、インクを染み込ませていないレーザー印刷はどうしても耐久性に劣る。使用開始半年程度でホームポジションのキー印字が剥がれる事例も多く、実際僕のREALFORCE 108UBKのキーキャップは、ホームポジションを中心に、使用頻度の高いキーから印字が剥がれている。
実は、キーキャップの違いによっても打鍵感が大幅に変化する。しかし静音・非静音との違いと比べれば本当に僅かなものである上にREALFORCEの店頭実機は非常に少ないので、気にしないでとりあえず購入した方が時間的な意味でも得だ。
ちなみに、R3 for WindowsのJIS配列のみ、アクセサリーとしてカラーキーキャップが存在する。採用されているのは昇華印刷のため刻印の耐久性も高く、デザイン面でカスタマイズをしたい人には非常におすすめ。
アクセサリー
アクセサリーではR3のテンキーレスが圧勝。
REALFORCE R2 PFU Limited Editionの発売時から、BIRD電子のHHKB純正アクセサリーをREALFORCE R2 テンキーレス用にしたものが販売されている。同じ東プレ製静電容量無節点スイッチを搭載したHHKBの純正アクセサリーなので実質REALFORCEの純正アクセサリーと捉えることもできる製品だ。
テンキーレス用のみではあるものの、ウッドパームレスト、キーボードルーフ、吸振マットが販売されており、吸振マット以外はおそらくR3でも使用可能なものと思われる。
一方、R3には東プレの純正アクセサリーとしてパネルデザインキット、キースペーサーセット、キーキャップセットが販売されている。
将来性を考えても、最新モデルのR3は吸振マット以外は全てのアクセサリーが使用可能な上に、R3は発展途上でこれからさらにアクセサリーが増えるものと思われるため、どうみてもR3の圧勝。
ちなみに、吸振マットを装着することによって凄まじい静音化と打鍵感の向上ができるという利点があるが、R3は初代やR2よりもゴム面積が増え、さらにR2から300gも重くなっているため、R2の吸振マット装着分アドバンテージはほぼ相殺されていると思われる。
それぞれのおすすめモデル
最後に、REALFORCE購入検討者(Macユーザー前提)によくある3つの代表的な要望からそれぞれにお勧めなREALFORCEを考えていこう。
パターン①:Apple製品に対する親和性が高く、かつ24時間、365日実力を発揮する最強のREALFORCEが欲しい
上記のモデルはテンキー付きJIS配列で昇華印刷が採用されたホワイトと誰でも簡単にREALFORCEを味わい尽くせる仕様で、さらに静音やAPCを搭載しHYBRID接続にも対応している2022年11月現在最強のREALFORCE。
「さまざまなデバイスで併用してもノンストレスな一般的な配列で、かつ打鍵音が静かなキーボードを探している。」という人にはこれ以上ない1台。
HYBRID機能の特徴でもあるペアリング先の高速切り替えを使うことで、Apple純正アクセサリ以外で使いにくいと悪評祭りのユニバーサルコントロールがノンストレスで使えるという大きすぎるメリットを持っているのだから、Apple信者なら買わないという選択肢はないと言って問題ないだろう。問題は1.6kgという重さだが、それを許容できればこれ以上ない1台となるはずだ。
パターン②:HHKBユーザーの買い足し
これもネット上でよく見受けられる。デスクトップMacでのみREALFORCEを使用し、MacBookやiPadではHHKBを使用するというスタイルにしたいというパターンに対するおすすめ例。
上記モデルは僕もメイン機として愛用しているREALFORCE R3HH11のテンキー付きバージョン。英語配列の昇華印刷キーキャップとHHKBとの差も少なく、かつテンキーも付きでコストパフォーマンスも高い。
そしてスペックとは関係ない話になってしまうが、スペースグレーに限りなく近いグレーの筐体にMac向けのフォントで刻印された美しい昇華印刷のグレーのキーキャップと、このモデルはデザイン面でもApple製品との親和性が完璧すぎるのだ。
シンプルなデザインが特徴であるHHKBを愛用するユーザーでも十分満足できるはずだと個人的には思っている。僕はHHKBの墨無刻印モデルも使用しているが、HHKBと比べてデザインが劣っているとは思ったことがない。
ちなみに僕のレビュー記事はこちら↓
[4年間待ち望んだ1台]REALFORCE R3 for Mac「R3HH11」狂気に満ちた開封&1週間使用レビュー
パターン③:メカニカルキーボードからの移行で、REALFORCEでもカスタマイズを楽しみたい
・R3 for Windowsのフルキーボード、静音モデル、APC、HYBRID全てを搭載したモデルのうちから選択
・R3パネルデザインキット、R3カラーキーキャップセットを適宜追加購入。
この目的は明らかにキーボード上級者だし、そんな人たちがこんな記事を見てくれるのかという話はさておき、REALFORCE R3の大きな特徴であるパネルデザインキット、カラーキーキャップセットを理由に、憧れのREALFORCEを手に入れたいと考えているメカニカルキーボードユーザーの人たちもいるだろう。そんな人たちにこそこのREALFORCE R3 for Windowsがおすすめ。
個人的には静音、APC、HYBRIDの3つはキーボード好きには意地でもおすすめしたいほど気に入っている。
ちなみに、REALFORCEの公式YouTubeチャンネルではソフトを利用したカスタマイズ、パネルデザインキットやカラーキーキャップを使用した見た目のカスタマイズなどに関する動画も存在するため、こちらを参考にしてみるのも超おすすめ。
結論:一番のお勧めはまさかのあのモデル!?
ここまで色々書いてきてこんな結論で終えるのはどうかと思うが、デザイン的にもスペック的にもREALFORCE R3 for Macの英語配列ブラックが一番おすすめだというのが当ブログの結論だ。
テンキーあり↓
テンキーレス↓
やはりデザインが美しすぎる。視認性の悪いグレーのキーキャップとシェアが少ない英語配列さえ許容できるなら、間違いなくこれが一番。
もはやインテリアとして買っても割安なのでは?と思ってしまうほどの無骨さと上品さを兼ね備えた高級キーボードらしからぬデザインは、地味すぎたり派手すぎたりして高級感を感じないと言われることも多い高級キーボード界の中では貴重な存在だ。
タッチタイピングができる人でなければ使いにくいというデメリットがあるが、折角のREALFORCEだ。タッチタイピングができない人はこれを機に習得してみるのはいかがだろうか。リズミカルに打てるようになってくるとタイピングすること自体が楽しくなるし、REALFORCEの中毒性がわかってくるとREALFORCE以外でタイピングしたくないと思うようになるだろう。コツが掴めると数時間連続でタイピングしても全然疲れなくなる。練習する時間は必要になるが絶対に後悔はしないはずだ。
最後に、僕の尊敬するブログ「Apple信者1億人創出計画」でよく使われる法則を紹介しよう。
製品が美しい
↓
毎日使いたくなる
↓
スキルや知識がどんどん上昇していく
↓
楽しくなって、さらに使いたくなる
↓
人生がより良くなる
簡単な法則だが、これは忘れてはならないことだと思う。人は機械ではない。デザインが美しいと思うからこそ好きになるし、毎日使っていこうと思うようになる。だからこそスキルや知識はどんどん向上していく。もちろんそれはキーボードでも同じだと僕は思っている。
大事なまとめの部分なのに個人の感想がメインになってしまって本当に申し訳ないが、これが本音だ。こんな記事を最後まで読んでくださったあなたも、是非REALFORCEを一度手に入れて、キーボード中毒になってみてはいかがだろうか。
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